富士山山頂から24時間観測データを送信

LPWA採用事例<ELTRES>

旧富士山測候所1号庁舎屋上からは天気が良いと南東方向には浅間大社が見える

NPO法人 富士山測候所を活用する会は,気象庁の旧富士山頂測候所を気象庁から借り上げて,大学や研究所の研究拠点として提供しています.これまで,大気化学,大気電気,雷,高所医学,永久凍土,生態学,教育の研究が行われています.
これらの研究は,富士山山頂に設置したセンサでデータを収集することが多く,冬の登山ができない時期は,観測データをメモリ・カードに記録しておき,次の登山時にメモリ・カードを回収する方法が主流でした.セルラ系通信機での伝送も行いましたが,消費電力が大きいため通信設備が大きくなるのがネックでした.
昨年より,SONYのサブGHz データ通信ELTRESで観測データを富士山山頂からクラウドに伝送する実験を行っています.

旧富士山測候所の窓に設置したELTRES送信機.3分間隔で24時間データを送信している.実験中の旧富士山観測所内の温度は,最高38.5度,最低-30度だったが,通信に影響はなかった

山頂から東京の受信局(東京スカイツリー)までは約105Km,茅野の受信局までは約87Km離れている.実験では,どちらかの受信局受と通信ができればクラウドに観測データがアップロードされるようになっている.実験時に富士山周辺に発達した雨雲と激しい降雨も経験したが,これによる通信への影響も認められなかった

首都大東京都市環境学部加藤俊吾先生は,一酸化炭素,オゾン,二酸化硫黄の量を長期間継続的に旧富士山測候所で測定している.ELTRESは消費電力が小さいので,バッテリ駆動で長期間データ転送できるのが大きなメリット.旧富士山測候所の別方向の窓4 つにそれぞれELTRESを1台ずつ設置し,リチウム電池LS33600(3.6V 17Ah)を6本並列接続したものをELTRESの電源にした

旧富士山測候所1号庁舎